2016年11月18日付 産経新聞記事より
《山梨》大月市の屋根職人らボランティアで組織する「ブルーシート掛け隊」が、地震で被災した屋根の修復で活躍している。
10月21日発生の鳥取地震には延べ60人を派遣、50棟の屋根に1年程度持たせる応急処置をした。4月の熊本地震では80人で80棟の屋根を修復。陣頭に立つのは屋根施工業の日本ステンレス工業(大月市猿橋町殿上)会長の石岡博実さん(63)。平成7年の阪神・淡路大震災から始めた取り組みを全国へ広げようとしている。
10月21日午後2時7分ごろ、鳥取県中部の倉吉市などで震度6弱を観測した。
同市の石田耕太郎市長はインターネットでブルーシート掛け隊の存在を知り、25日、支援を要請した。鳥取県によると、県内の全半壊は89棟、一部損壊1万1570棟。倉吉市内の住宅被害は約1700棟だった。
被災家屋の屋根修復の意義について石岡さんは、「被災住宅にいち早くシートをかけねば、家本体、家財、電気製品など全部駄目になり、転居せざるを得なくなる。屋根のダメージは深刻だから」と説明する。
10月31日、鳥取地震の支援に11人が、2トントラックとワゴン車など3台に分乗、大月を出発。機材は電動のこぎり、バールなどの工具類やくぎ、ロープなどだ。
被災現場では、雨漏りする屋根全体をブルーシートでまず覆い、数本の角材でシートの裏表両面を挟み、風であおられないように固定。作業は4人の職人で1日に4棟が限界という。
屋根修復の取り組みは21年前の阪神・淡路大震災にさかのぼる。当時、600万円の持ち出しになったというが、思わぬことを知らされることに。「屋根職人の世界は、暴走族やシンナーをやっていた子らも多かった。その彼らが被災者から涙を流して迎えられると、目がキラキラ輝き始めた。彼らが求めているやりがいはこれだったのだと」
そんな体験を重ね、被災地支援は屋根工事の本業が苦しいときも続けた。石岡さんの行動の原点は“考える前に動く”。今計画しているのが、ブルーシート掛け隊の全国展開だ。
「都道府県当たり10人、全国で約500人の屋根職人を組織化し、被災地へ送れるようにしたい」
被災地での最大の問題は、全国の自治体から送られてきた大量のブルーシートが、屋根職人不足で野積みされていることだ。「ならば、行政にその無駄な費用を職人の調達費に振り向けてもらえないか。200万円あれば、職人100人で100棟の補修ができる」という。
年内に後藤斎知事や市町村会へ、屋根職人の派遣の必要性を訴える提言書を提出する。「年明けにNPOを立ち上げ、まず県内30人の職人でスタート、行政と手を携え、全国に広げていきたい」